おとこのつうしんぼ

2010.11.29

愛欲/希望度★★★★★

 ダレかと思いっきり愛し合いたい。
 振り返ってみれば、“恋”というものをまだ感覚でしか分かっていなかった頃から、胸に芽生えた淡い恋ゴコロの根っこにはいつも、この欲求があったように思う。
 「愛したい」だけでもなく、「愛されたい」だけでもない。「愛し合いたい」。
 だから、「彼のこと、好きかも」って思った次の瞬間にはもう、「私のこと、好きになってくれないかな」って、自分の恋ゴコロに見返りを期待した。
 そして数週間後、「んー、なんか、脈ないから、もうやめたー」。(……)。まだ、“あきらめられぬ恋”というものを知らぬ頃、私の恋ゴコロはそうやって、すぐにサラッと蒸発。もし、両思いになれたら大爆発したにきまっている「好き」だったのに、相手に求めていた「好き」をもらえないと分かった途端、「やっぱ、違った。恋じゃなかったー」なんて、それはもう都合よくすべてを解釈。(苦笑)。で、「最近、バスケ部の先輩が気になるかもー」なんつって、すぐにまた、新しい恋ゴコロをせっせと手づくり。(恥)。
 「だって、恋してなきゃヒマじゃん」。そう思っていた。恋してなきゃ授業中、女友達の席まで小さく折ってコッソリまわす、手紙の中に書くネタないし、恋してなきゃ放課後、駅で待ち伏せしたり誰もいない教室で待ち合わせしたりして、胸をドキドキ鳴らせない。「ね? 学校と家を往復するチョー退屈な日常の中で、時間、持て余しちゃうよ」って。
 でも、本当に持て余していたのは、時間なんかじゃない。

 ココロ。

 誰かのことを想っていないと、ココロの大きな部分を占める『愛欲』を、どうしようもないほどに持て余してしまった。ココロがヒマになればなるほど、寂しくなって、不安になった。
 だから、ダレか。ダレか、いないかな。そりゃ、誰でもいいわけじゃない。ダレかイイヒト、いないかな。いつも、いつも探していた。「愛し合える」ダレかを。

 そして、恋。

 “ダレか”を求めているココロがあったからこその、“このヒト”だ、という想い。そして、“理想”があったからこその、“このヒトじゃなかった”という落胆。

 

 ――そのヒトと出会ったことで、胸に初めて恋ゴコロが芽生え、相手の反応や行動とは関係なしに、その想いは濃度を増して、ありのままの“そのヒト”を包み込むような愛へとかわってゆく。
 『愛』の純度でいえば、それが最も理想的な『ラブ』ストーリーなのかもしれない。でも、根のない場所に、花は咲かないよ。淡いモノから深いモノまで、すべての恋は、ヒトのココロの奥底にある『欲求』が生み、育てるもの。
 どんなに強く、“あきらめられない”と思った恋だって最後には、自分が欲しいカタチの愛を相手からもらえないことに疲れ、いつのまにか、“本気”だった恋ゴコロは、“本気だった分”だけの時間をかけて、少しずつ蒸発していった。
 恋とは、そういうもので、ヒトとは、そういう風にできているんじゃないかな。もちろん、実らぬ恋を死ぬまで想い続ける愛のカタチというものも、実在するのかもしれない。でも、そっちの方が“美しい”愛のカタチだとは別に、思わない。
 そのヒトのココロがそれを望んだという点で、すべてのヒトのさまざまな恋は、イコールだから。そして、『愛』が、その響きほどにキレイなモンじゃないのと同じように『欲望』だって、そう醜いモンでもないからだ。
 『愛』と『欲望』。二つがセットだって考えると、妙に府に落ちる。
 『愛欲』。それは、美しさと醜さ、その両極端の性質を網羅してしまうほどに巨大な、ひとつの願いごと。神さまが、それを包み込むモノとしてココロを作ったんじゃないかって思えるほど、ココロに深く、根付くもの。
 その圧倒的な存在に、苦しめられもするけれど、それとおなじくらいの威力を持って、それはヒトを救ってもくれる。

 

 「死にたい」って、今までの人生で二回だけ、本気で思ってしまった“瞬間”がある。小四の春と、中二の秋。その時、自分の視界の中にあった部屋のカレンダーの絵と、廊下のフローリングの色までハッキリ覚えているけれど、それ以上に私の記憶に強烈に残っているのは、「やっぱまだ死ねない」と思った理由。
 まだ男とキスもしていないのに、死ねない。まだ男と愛し合ってもいないのに、死ねない。あぁそうか、今こんなにも辛いのは、まだ、愛し合う男がいないから。あぁもう、絶対に生きる。そう思った。  
 「愛してる」、「オレも愛してる」。
 ドラマみたいに、そんな言葉を男と交わし合い、きつく抱き合い、深く愛し合える日を、ココロの底から夢みていた。バカみたいかもしれないけど、それが、私が人生に絶望しかけた時に私を救ってくれた、何より眩しい、未来への光だった。

 『欲望』は、『希望』。
 いつだって、欲しいものがあるから、未来に夢を、みることができる。欲しがってばかりで、そんな自分の欲深さに疲れて、泣きたくなる夜もあるけれど、欲しいものがあるから前を見て、今日から明日へ、生きていける。
 
  

 
 

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